ダライ・ラマ法王の自伝を読もうと思ったのは
チベット仏教のダライ・ラマ法王による解釈と
その人柄への純粋な興味によるものだったが
読みながら一番強く思い出したのは、中国の100年計画のことだった。
それはこの自伝に、1949年に始まる中国のチベット侵略の様子が
詳細に書かれていたからであり
ダライ・ラマ法王の葛藤や、毛沢東との会合の様子などが
非常にリアルに浮かび上がってきた。
ダライ・ラマ法王の人生そのものが、中国によるチベット侵略と
密に重なり合っているのだから、
その人生をたどれば、自ずと
チベット侵略のプロセスをたどることになるのだろう。
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中国の100年計画について、私が最初に読んだのは
櫻井よしこ氏のHPにおいてだったと思う。
長野の聖火リレー以前のことだから、10年近く前の話になる。
当時の私はチベットや法輪功に関心があり
(チベットやウイグル族における中国の虐殺、拷問は、ご存じの方が多いだろう)
それについて調べていた関連から、100年計画にたどりついた。
100年計画は中国のアジア覇権および、世界覇権に関する戦略といえる。
櫻井氏は中国と国境を接するベトナムで生まれ育った過去があり
中国の性質や脅威について、市井の人々とは違う、
並ならぬ思いを持っていると感じられた。
そのときの自分が、どのくらいの信憑性をもってそれを受け止めたのか
はっきりとは覚えていないが、これが本当の話だったらと、
暗澹たる気分になったように思う。
最近では、アメリカ人による100年計画に関する本も有名になったりと
一般の人の目にも触れるようになったのではないだろうか。
(個人的には、この本↑にはアメリカに不利なことは一切書いていないように思う)
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2008年、チベット騒乱が起きたとき
いまチベットを放置すれば
日本が将来、チベットと同じ道をたどる可能性がある、
との話を聞いたことがある。
その信憑性はここでは問題にしないが
ダライ・ラマ法王の自伝を読むと、「中国のやり方」がよく見える。
どのような「顔」で入ってきて、どのように「顔」を変えるのか。
私たちは何を信じて、何を疑うべきなのか。
国の数だけ、いや人の数だけ、異なる正義がある。
地政学的な「やり方の違い」を知ることは、
いつの時代もためになるだろう。
ダライ・ラマ法王14世も、すでに81歳になられている。
輪廻転生を説くチベット仏教において
「もう私は生まれ変わらない」と発言されたことは
大きな衝撃を世に与えた。
しかしそれは決して、輪廻転生という仕組みの否定ではなかった。
当時6歳だったパンチェン・ラマ11世が
1995年に中国に拉致されて以降、消息不明となり
中国政府によって、新たなパンチェン・ラマ11世が擁立されるいま、
この自伝を読むと、その言葉の背景が痛みのように胸にしみる。
ーーダライ・ラマという存在が中国に利用されることだけは。。。
1日でも多く長生きされるよう、切に願ってやまない。
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