文壇の稿料は、もともと契約書等なく、
口約束ではっきりしないものだと聞いたことがある。
私のいた会社は、その辺りは実にきちっとしていて、
最初に稿料を明示して、著者の了承をもらうという、
他の業界では当たり前の事を、当たり前にやっていたから、
この手の話を初めて聞いたときは、驚いたものだった。
未払いについては、様々な業種で聞かれるが、
実は私も、未回収のセッション代がある。
まだ契約書等、作っていない頃で、
分割も口約束だった。
(メールのやりとりは残っているけれど)
そのことをふと思い出したときに、いつも私が思うのは、
相手の人の気持ちだ。
後ろめたいのか、罪悪感があるのか、
それともラッキーだと思っているのか、
正直言って、検討がつかないけれど、
その人が失い続けているものがある。
それが「信頼」だ。
そのことを思うと、私の胸は痛む。
私がその人を信頼することは、おそらく、難しいだろう。
こういうことは、「相手からエネルギーを奪う」行為になる。
本人は得した気持ちになるかもしれないが、
実は、全く得ではない。
このエネルギーを奪う行為というのは、
いろんなところで聞く。
イラストレーターの同級生に、
ただで絵を描いてくれと頼んだのに、断られた。
友達だからいいじゃないか、ドケチ、とか。
ママ友から、ただでネイルをやってくれと言われて、
困っているネイリストの話とか。
私は、話を聞いたり(カウンセリング)、
リーディングをしてコーチングをしたり、
という仕事をしているけれど、
数年前は、同じような状況に遭遇することがあった。
私のスキルor能力を知った人から、突然お茶のお誘いがくる。
なんとか時間を作って行ってみたのだけど、
(ただで)やってくれ、話を聞いてくれ、リーディングしてくれ、という話だったりする。
じゃあ、相手の人が仕事でやっていることを、
ただで私にやってくれるかというと、そんなことはない。
私の提供するものは無料だけど、
相手の提供するものは有料、ということが多い。
これは自分の仕事ですから、とそういう人は言う。
(私も仕事なんですが)
そういう人を観察していると、
いろんな人に対して、同じような「奪う行為」をしている。
こういうとき、その人は「得をした」と思うのかもしれないけれど、
実は全く逆で、本当はものすごく「損」をしていることに気づいていない。
いろんな人の、時間や仕事をないがしろにし、
エネルギーを奪う代わりに、
なかなか回復しづらい、大切なものを失っているのだ。
また、そういう人の周りには、似た波長の人が集まっている。
だから、自分が見えないのだろう。
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